電車にて
私立小学校の低学年が下校する時間に電車に乗った。
同じ車両の向こうに女の子が数人。
すぐ隣にお母さんといる男の子が一人。
席の端に座ったお母さんのすぐ横に立ち、扉の向こうを
のんびり眺めていた。
少ぉしうとうとしかけていた私。
ふいに、女の子たちの小さな悲鳴が耳についた。
「はしゃぎすぎたのかな?」と思う程度だったのが、
もっと大きな騒ぎ声に変わり、ばたばたという足音まで
聞こえてきた。
ただ事でない様子に眼を開けてそちらを向くと、女の子
たちが向こうの車両に向けて逃げていくのが見えた。
彼女たちが元いた場所には、リュックを背負った一人の
男性。
彼は、女の子の方を見送ってゆっくりこちらにやってくる。
事情が分からないけれど、すぐ近くの男の子が怯えて
固まっている。
男性は私の前を通り過ぎた。
何事もない。
きっと、向こうの車両からただ車両を変えるために歩き
続けている人だろう。
と、思ったとき、その男性が、男の子に何か話しかけ
ながら頭を撫でた。
そして、次の車両へ歩いて行った。
男の子のお母さんが男の子に言った。
「あなたは慣れていないでしょうけれど、ちょっと
みんなと違う人もいるのよ。怖くはなかったでしょう?」
・・・うまく言えないが、お母さん落ち着いているなと思った。
偉いなと思った。
女の子たちが逃げていったのは、きっと同じように頭を
撫でてきたからだろう。
私がそのお母さんならどうするかしら。どう子どもに言う
かしら。
たぶん同じようなことを言おうとはすると思う。
けれど、あの男性の行動はまずいだろう。
彼の身内であったなら気が気でないだろう。
まず、変質者に間違えられる。
まかり間違えたなら、警察沙汰だ。
ああいうことをした理由は推察できる。
きっと、小さい子が可愛かったんだ。
子犬や子猫を愛でる気持ちと寸分違わない。
街で赤ちゃんの愛らしい姿を見ると思わず「可愛いねえ」
くらいは言うだろう。それときっと同じ。
でも、素敵な女性を見て、急に近寄って行くのに似て
吸い寄せられるように行動するのはちょっとまずい。
彼らのような子どもに、どう教えたらいいのだろう。
禁止するだけでいいのか。
反対に、逃げだしたくなる方の子どもにはどう
教えればいいのだろう。唐突に近寄って頭を撫でられる
なんて、怖いと思うのも当然だ。
とても複雑な気持ちになった。
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